拒絶の理由を発見しないから

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日本語の発音を変えた

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砂町銀座

 日本語の発音は難しい。きちんと教わらないからだ。サ行が英語のthになっている人を何人も知っている。まさしく「です」がdeathになっているのである。

 僕も日本語の発音が上手くない。最初に気づいたのは小学2年か3年のときである。どうしても「ち」が上手く言えないのだ。学校の帰り道に「ち!ち!ち!」と言いながら,どうしても「き」や「し」の音が混じってしまうことを認識したのを覚えている。

 中学3年の時に,クラスの皆の前で話す練習をしていたところ,その話し方に慣れているから分かるが,そうでない人には分からないだろうと指摘された。一度録音して聞いてみたことがあるが,い行が上手く言えていないのは明らかだった。そして,い行がうまく言えない人が一定数いることも経験的に知っていた。

 英語はどうだったか。英語は外国語なので,発音は教わらなければならない。小学生のときは,聞こえた音を片仮名に落とし込んで覚えていた。故に,What's your name?は「ワッチャーネイム」であった。英語の発音が日本語の発音と違うことを意識したのは小学6年のときだった。きっかけは,ネイティブに[r]の発音を教わったことである。やってみると,確かにそれらしい音が出てくるのである。これには感動してしまった。そして発音というのは勉強すれば良いのだということを知った。

 更なるステップアップがあったのは,中学の英語でgetの過去形gotを習ったときだった。教科書に書かれていた発音記号は/gɑt/だった。片仮名発音「ゴット」あるいは「ガット」となっていたが,先生が流すCDの音はどちらでもなかった。何で調べたかは忘れたが,「アよりも口を大きく開けてアを言う」と書かれていたので,やってみるとたしかにそれらしい音が出た。その次は/æ/が気になった。エを言いながらアに変化させていくとその途中でそれらしい音がすることが分かって,楽しくなった。

 ところが,日本語の発音を顧みることはなかった。ついに先日,い行をうまく発音できない現象を側音化構音と言うことを知った。これは衝撃的であった。どういうことかというと,そもそも僕はい行は側音であると勘違いしていたからである。上手く言えないのは,左右のバランスが悪いからだと思っていたのだ。

 これは矯正できるというので,いくらか支払って直そうと思った。コロナ禍でなかなか機会を得られずにいたところ,ふと思ったのである。別に口の形がおかしいのでなければ,自分で直せるのではないか?そもそも正しい発音を知らないだけではないか,と。

 よく考えてみると,面白いことに,英語のときは,い行(ここでは便宜上こう書く)は問題ないのだ。なぜなら,子音+母音という組み合わせを分かっており,い行だけ特別な調音をする理由がないからだ。日本語では「き」や「ち」が発音しづらくて仕方ないのに,keyやcheeseは何ともないのである。

 そこで,試しに英語と同じように真ん中で調音してみた。「き」っぽい音や「ち」っぽい音が出てくる。ああ,これで良いのか?と思って日本語の発音を調べてみると,ちょっと違うらしい。きは/kʲi/,ちは/t͡ɕi/とのこと。まあ側音化するより良いだろうということで,試しに日本語の発音を変えて生活し始めた。慣れないので変な感じである。

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